gumiショック、そしてその先にあった組織崩壊危機の真相を社長に語らせた | 凸撃!ノセちゃいますが、ナニか? #1

gumiの広報担当・大枝が、社内の気になるあの人に容赦なく突っ込むインタビュー企画。ついつい”乗せ”られちゃう取材相手から際どい話を引き出し、包み隠さず”載せ”ちゃいます!

大枝
社長!
川本
なんやねん、突然。
大枝
唐突ですが、インタビューしにきました。
川本
インタビュー?何の?
大枝
オウンドメディアをリリースするにあたって、やっぱり最初は社長に出てもらわないといけないと思いまして。場所取ってあるので、ちょっと来てもらってもいいですか?
大枝
こちらです。
川本
(どこに連れてくつもりや……)
大枝
こちらにお座りください。
川本
なんで駐車場の荷捌場やねん!しかも椅子用意されてるし(笑)
大枝
赤裸々に語っていただくには人影の少ないこの場所がぴったりかと思いまして!
川本
何聞く気なん!?怖いんやけど……。
大枝
では、早速インタビューを始めさせてもらいます!あ、ちょっとその前に、やってみたいことがありまして……。
川本
何!?
川本
たわし!?どっから出てきたの!?!?
大枝
あ、乗った。
大枝
もう一個乗った!
川本
意外と乗るもんやな……、っておい!?
川本
このくだり必要ある!?
大枝
亀の子たわしって、簡単に毛先が潰れないように考えられた形状らしいんですよ。川本さんの髪型もガッチガチのツンツンなので、うまくシンクロするんじゃないかと思いまして。
川本
そんなくだらんことを試すな(笑)
大枝
でも、素朴な疑問なんですが、なんでいつもそんなにツンツンに立てているんですか?
川本
いや、理想は、昔の江口洋介みたいな髪型なんだけど。
大枝
サラサラのロン毛ですね。
川本
そうそう、でも自分は髪質的に無理でね。だから、いっそのこと真逆でいこうかと思い。中学生の頃から毎月ジェルとワックスを1個ずつ使っていて……、毎月1千円でかれこれ30年くらい?これまで整髪料にはかなりのお金をつぎ込んできたな。
大枝
すごっ……でも、髪を立てているのは消極的選択だったんですね。では、どうしていつも全身黒ずくめなんですか?正直ちょっと怖いです。
川本
(たわしを乗せるあなたのほうが怖いわ……)
これは好みとしか……。逆にピンクとかを着こなしている人はすごいと思う。絶対自分は似合わないから。
大枝
服以外も黒で揃えてるんですか?
川本
基本、全部黒。家電とかも。洗濯機だけは黒が売ってなかったから、白いのを買って真っ黒に塗ったね。これが意外と仕上がりが完璧で。
大枝
黒への拘りの強さがすごい……。経営も「黒字」を出し続けるという意思表示でしょうか。
川本
以前、某プロデューサーから、「髪立てる前に売上立てろ!」って言われたのを思い出したよ。自分がゲームを作れるわけじゃないけど、売上や利益を作るための土台作りは、経営者としての責務だよね。
大枝
経営者としての覚悟を伺えたところで、早速本題に入りたいのですが、今日は俗に言われる「gumiショック」についてお話を伺いたいなと。
川本
ちょっと待って、この流れで出すテーマにしては重くない?
大枝
これから色々な情報を発信していく予定ですが、「gumiショック」を語らずに、他のことは語れないかなと思いまして。この機に、社長にマルっとお話しいただこうかと
川本
そう言うなら、答えるけど……。

「gumiショック」、そもそも何が起こっていた?

大枝
では、よろしくお願いします。証券市場を揺るがせた「gumiショック」って、そもそも何だったのか?一体何が起きたのか、そこから伺いたいと思います。
川本
そうね。gumiは、2014年12月に東証1部に上場したんだけど、上場後2ヵ月半で業績予想を黒字から赤字に大幅下方修正することになってしまい。その後、諸々の事象が重なったこともあり、結果的に株価の急落を招いてしまった
大枝
まさに天国から地獄ですね……。
川本
上場のお祭りモードから一転して、真っ暗。頭は真っ白。さすがにお祓いもしてもらったよ。支援してくださったステークホルダーの皆様に合わせる顔もなく、正直、生きた心地がしなかった。
大枝
チェックメイトですね。
川本
終わった感がすごかった。投資家や業界関係者の皆様からもお叱りの言葉をたくさんいただいた。
大枝
なるほど。そんなに多くの皆様に迷惑をかけたと考えると、当時CFOだった川本さんがA級戦犯とも言えますよね。
川本
もちろん、皆様の期待に応えられなかったことについて、当時のCFOとして責任は痛感している。
大枝
業績予想を下方修正することになったのは、読みが甘かったということですか?
川本
必ずしもそうとは言い切れないけど、作ればバンバン売れる環境だったから、当時の予算管理では、そこまで保守的な予測はしていなかった。もちろん、スマホゲームの特性上、月次の売上に一定の変動があることを踏まえて予算管理をしていたけど、スマホゲーム市場の急拡大の波に乗って大ヒットを創出していたし、その勢いで世界中にも拠点を作って、従業員数も一気に増やしていっていた状況だったからね。
大枝
イケイケだったんですね!
2013年7月のリリース後大ヒットし、gumiを上場へ導いた「ブレイブ フロンティア」
川本
うん、でもそこに油断が生まれたのかもしれない。加えて、当時はまだスマホゲームの歴史が浅かったこともあり、結果論ではあるけれど売上の下落リスクを十分に織り込めていなかった。

「gumiショック」で浮き彫りになった、組織の綻び

大枝
原因はそれだけですか?
川本
いや、実はもっと本質的な要因があってね。当時自分はバックオフィスを統括してたんだけど、フロントで売上を上げてくれている人たちのことや、現場で起こっていることをほとんど理解できていなかった
大枝
でも一人で全部見るのは流石に無理がありますよね。CFOの領域を超えている気がします。
川本
そう、その「CFOだから財務だけ」みたいな考え方が視野を狭めたり、逆に必死に自分の立場を守ろうとしたりすることになる。当時のgumiでは、現場には現場の管掌役員がいて、現場のことはその人任せみたいな、完全な縦割りになっていた。加えて、役員同士の関係性はあまり良いとは言えなかったので、うまく連携ができていなかった。
大枝
そういう社内のドロドロした話、もっと聞きたいですね!
川本
正直、雰囲気はあまり良くなかったと思う。役員同士がライバル関係で、くだらない社内政治みたいなものも横行していた。そんな不安定な状況だったから、組織を揺るがす事件が起こって、辞めてしまった人がたくさんいたね。
大枝
「gumiショック」をきっかけに、組織の綻びが表面化してしまったと……。
川本
さらに、以前は応援してくれていた社外の方々からも、「gumiはけしからん」という冷ややかな視線を感じるようになって。毎日、朝の3時、4時まで、バックオフィスの幹部陣と「この先どうしようか」と話していたのを良く覚えてる。
大枝
鋼の心がないときついですね……。私だったら耐えられなくて逃げ出してしまいそう。
川本
極めつけは、かつての倒産危機を一緒に乗り越えてきた人で、一番信頼していた戦友的存在の人にさえも、辞めることを告げられて……。
大枝
どん底まで落ちたんですね……。でも、社長も逃げることができたんじゃないですか?他に行くところが無かったんですか?
川本
そういうわけじゃない(笑)。カッコつけるわけじゃないけど、あのまま辞めるのは嫌だった。社内からは無責任に逃げたと思われ、社外からも「戦犯でしょ」と思われたままになるのは不本意だった。真面目にやってるのに、悔しいやん。
やることやって、それでうまくいかなくて、創業者の國光さんから「お前はダメだった」と言われて終わるならまだいいけどね。とてもじゃないけど、混乱の渦中に辞める精神にはならなかった。
大枝
バリバリカッコつけてますね!
川本
あとは、自分を信じて付いてきてくれる仲間の存在が大きかった。毎日明け方まで話していた幹部の人たちもそう。彼らは今でもgumiの主力だけど、そうやって自分を支えてくれるメンバーのためにも、リーダーとしてしっかりやっていかないと、という想いがあったね。

「だったら俺がやります」 背水の陣の覚悟で取り組んだ組織改革

大枝
なるほど。それで、代表になられたんですね。
川本
そう。代表になって、お金周りだけでなく、組織ももっと見る必要があると思ってね。
大枝
でも、どうやって國光会長に圧をかけて代表の座を勝ち取ったんですか?
川本
圧はかけとらん(笑)。外部からは「現役員陣ではダメだから、プロの経営者を雇うべきだ」と言われてて、自分も一時は外部経営者の登用を提案しかけたんだけどね。でも、当時の社内の状況を見ていると、コンサル的な手法で問題が解決できるとはとても思えなかった。もっと泥臭いし、本気でコミットしてやり抜く覚悟がないと、現場も付いてこないのは明白だった
川本
それで、國光さんに、「だったら俺がやります。2年で結果出せなかったら、首切って良いんで」と直談判してね。そうしたら、國光さんも「じゃあ一回お前に任せてみるわ」と言ってくれた。
大枝
結構圧かかっているかと(笑)。代表に就任してからは、何をされてきたのですか?
川本
まずは、経営判断として、誰にお金を割り当てるかをきちっと見極めること。印象で評価せず、成果主義への移行を明確にした。
大枝
好き嫌いとか、感覚や感情を無にして判断するって、ちょっとドライな感じも出そうですね。
川本
ドライかもしれないが、納得感があるほうが大事だと思うんだよね。だから現場の要職とは一人一人丁寧に面談をして、ミッションをすり合わせ、その達成に必要な十分な時間と相応の給与を与えて、「成果出してくれ」と試させた。
大枝
厳しく聞こえますが、確かに納得感というか、公平感もありますね。
川本
そうだね。「そんなことしなくても、実力はすぐに見極められる。2年の時間が無駄」という声もあったけど、客観的な事実や成果でもって、一貫した評価や判断をすることが自分の筋の通し方だった。
大枝
それで、実際に社長を頷かせる結果を出した人はいたんですか?
川本
結果的に、今のgumiの主力タイトルをプロデュースしている、今泉のチームだけが残った。正直、そうなることは予想してたんだけどね。でも、予想で判断してしまうと経営者としての信頼を失うことになると思った。
信頼という意味では、現場も含めた経営合宿をやるとか、これは入社当初からだけど、自分自身がゲームをやり込むとか、現場のメンバーとのコミュニケーションを密に取るとか、そういったことを重視してきたね。
大枝
社長が色んなゲームを四六時中やられているのは、暇つぶしじゃなかったんですね!
川本
そりゃそうや!

「gumiショック」から5年半、ようやくスタート地点へ

大枝
こうした信頼関係を重視されている背景として、やはり「gumiショック」のときに、多くの人が離脱していった経験が大きく影響しているのでしょうか?
川本
そうだね。さっき言った通り、多くの人が辞める中で、自分が見ていたバックオフィスのチームの人たちは辞めずに残ってくれたんだよね。それは彼らが、これまで自分がやってきたことに少なからず共感してくれていたからなのかな、と。だったら、現場のマネジメントも同じようにやれば、現場の人たちとももっと距離を近づけられると考えてね。
大枝
なるほど。それで実際、当時崩壊しかけていた組織は、「gumiショック」が起きてから5年半、社長が代表に就任されてからでいうと4年半が経ったいま、良くなったという実感はありますか?
川本
これまでに、広げ過ぎたものを色々と整理して、4年ぶりに待望のヒットも出て、現場の人たちも「なんか良くなったんじゃない?」ってちょっとは思ってくれてるんじゃないかな。そういう意味では、やっと自分が、この会社の経営者としてスタート地点に立ったかな、と。
大枝
ようやくスタート地点ですか!では、これからgumiはどんどん良くなっていくと期待しちゃっていいですか!?
川本
一朝一夕で良くなるものではないけど、今後は、どうやって事業を大きくしていこうとか、どう成長させていこうとか、もう少しポジティブな方向にリソースを割けることは確か。そういう課題を、みんなで考えられる段階には来たんじゃないかな。
大枝
組織にも余裕が生まれてきたってことですね。ぶっちゃけ、株価は「gumiショック」前に戻せますか?
川本
少なくとも戻す努力は精一杯やる。運任せじゃなく、きちっと組織作りを行ってきたことで、売上も利益もしっかり立てられるようになってきた。その意味でははっきりとした手ごたえを感じているよ。

浮き沈みが激しい業界だからこそ、気持ちはいつも前向きに

大枝
今後、社長にとっての理想の組織を実現するために、心がけていることを教えてください。
川本
今は、自分が社員のことをもっと知ることだね。全部は難しいかもしれないけど、その人がどういう人生を歩んできて、どういう目標や夢があるのかとか、家族のこととかっていうのを知ることは大事だと思っていて。会社なり自分なりを支えてくれる社員は、全員幸せになって欲しいと思ってるんだよね。
大枝
えっ、全社員の人生を背負われる気ですか!?
川本
それは大袈裟やけど(笑)。ただ、gumiという組織が、人生の目標を達成できる場になれば最高だなって。そのためには、単なる仕事の付き合いよりも、もう少し深いところまで、その人を知らないといけない。知っていたら、協力できることもあると思うし。せっかくみんな、同じ会社に乗り合わせたんだからね。
大枝
これまでクールでちょっと怖い印象がありましたが、そんなお考えがあったとは……!今日は、社長の人情深い一面を見られた気がします!冒頭にいきなりたわし乗っけてすみませんでした。
川本
「亀の子」ってことは、長寿で縁起いい感じもするし、まあ、今後ますますgumiが成長することへの祈願だったって前向きに捉えるよ。
大枝
(なんと大らかなお方!)
では最後に、そんなgumiの更なる飛躍に向けて、一筆お願いします!
川本
そうね、やっぱこの言葉かな……
大枝
「Stay Positive」!gumiのValueの一つですね。
川本
gumiのValueは他にも2つあるけど、重要さで言うと、8割くらいは「Stay Positive」。大変なことの方が多いからこそ、ポジティブでいようよって。もちろん、起こってしまったことは真摯に受け止め、反省して、改善に向けて最大限取り組んでいく必要はある。でも、大変な時に自分が腐ってしまったら、そういう思考にもなれないからね。
浮き沈みが多い業界だからこそ、明るく楽しく、前向きにやっていきましょう!
大枝
社長が眩しくて、一瞬ここが地下駐車場であることを忘れかけました……!
本日はお時間を頂きありがとうございました!

★あわせて読みたい!

エンタメ界のレジェンド・広井王子氏とのクロストーク(前編) | 時代を超えるクリエイティブの本質に迫る