gumiの広報担当・大枝が、社内の気になるあの人に容赦なく突っ込むインタビュー企画。ついつい”乗せ”られちゃう取材相手から際どい話を引き出し、包み隠さず”載せ”ちゃいます!
<登場人物> 國光 宏尚(くにみつ・ひろなお)米国Santa Monica College卒業後、2004年に株式会社アットムービーに入社。同年、取締役に就任、映画・テレビドラマのプロデュースおよび新規事業の立ち上げを担う。2007年、株式会社gumiを設立し、代表取締役社長に就任。2016年以降はXR事業やブロックチェーン事業などの新規事業を管掌し、2018年に代表取締役会長に就任。2020年以降、取締役会長として職責を果たし、2021年7月に任期満了につき退任。
川本 寛之(かわもと・ひろゆき)京都大学卒業後、日本政策投資銀行に入行。ベンチャー投資業務の経験を経て、2011年に株式会社gumiに入社。上場に向けた資金調達や国内外企業とのアライアンス、管理部門の再築などを主導。2016年に代表取締役副社長に就任し、モバイルオンラインゲーム事業を管掌し、事業部門も含めた組織マネジメント強化にも取り組む。2018年に代表取締役社長に就任。
大枝 何がって……! 社長の時代がですよ! 社長がこの時を一番待ち望んでいたのは知ってますよ!! で、どうやって國光会長を退任に追い込んだんですか?
川本 いやいやいや!(笑)。 俺が仕組んだみたいな言い方してるけど、全然ちゃうからね!?
大枝 またまたまたー。ここだけの話ですから。今日は洗いざらい全部話してくださいね。
あ、その前に、これ持ってきました。
川本 また乗せるの!?
この前のたわし はギリ乗ったけど、これ乗る? 結構大きくない!?
大枝 タヌキは人を騙すというじゃないですか。川本社長がどうやって会長を騙したのかなと思いまして。
川本 だから、騙しとらんわ! そこまで言うなら國光さん呼んできて確かめようか!?
創業者・國光退任の真相 川本 なんか俺が國光さんを退任に追い込んだ疑惑がかけられてるから、國光さんの口から真実を話してもらおうと思いまして。
國光 まあ、川本さんは驚くほど快く背中を押してくれたよね……。
國光 というのは冗談やけど(笑)。本当のことを言うと、これまで仕込んできたVRとブロックチェーンがいよいよ世界的に立ち上がってくるタイミングで、もう一回起業家としてイチからチャレンジしたいと思ったんだよね。
大枝 でも、gumiでもVRとブロックチェーン事業はやっているのになぜ辞めなければならなかったんですか?
國光 前に3回オールインしたら世界に届くと言ったことがあったけど、実際3回では難しかった。世界で戦うためには、更に3回オールインする必要がある。でも上場していると当然背負うものが増えるから、どうしても大胆な投資は難しくなってくるんだよね。
川本 ゲーム事業が主軸のgumiとして新規事業に割ける予算上の限界はありますからね。
國光 うん。だから、もう一回自由になってVRとブロックチェーンに全張りしたいと思った。
で、川本さんに相談したら快諾してくれて……
川本 どうしても俺を悪者にしたいのか……。
でも真面目に、「本当に良いんですか?」って何回も確認したんだよ。自ら創って14年かけてここまで成長させてきたgumiを去って、肩書とかも全部捨てて、またイチからスタートするというのは、はっきり言って狂気の沙汰。この人はどこまでも起業家なんだなと思ったよね。
大枝 会長、いざとなるとやっぱりちょっと後悔してるんじゃないですか?
國光 後悔はないよ。時価総額を1,000億円に戻せなかったという心残りはあるけど……。でもそれは、川本さんたちが奪還してくれると信じてるから。あとは、目指していた世界一を達成できなかったことかな。でも、いま振り返ってもその時々では最善をつくしてきたと自信を持って言えるから、後悔はないね。
川本 常に全力でやってきましたよね。1,000億円奪還は、國光さんとの約束としてしっかり果たしますよ。
國光 うん。1億円ですら資金調達するのが大変だった時代に100億円以上調達したり、未上場でファンドを作ったり、海外も最大13拠点作ったり。当時の国内スタートアップ企業がやってこなかった最先端を切り開いてきた 自負はあるよ。
出会いとターニングポイント 大枝 退任が國光会長の意志ということは分かりましたが、まだ裏がある気がするんですよね……。お二人の関係性を探るために、これからとある場所にお連れしようと思います。
川本 前回この企画で地下駐車場に連れて行かれたけど、今回はどこ!?
gumi創業期の麻布十番のオフィス。3階の一角を利用していた。
國光 gumiの最初のオフィスやん! シェアオフィスで3人でやってたときの!
大枝 このワンフロアの一角からgumiが始まったと思うと感慨深いですね。
國光 正確にはルノアールが最初やけど、ちゃんとしたオフィスを構えたのはここが初めてだね。川本さんとの出会いもここだったよね。
川本 前職時代、gumiに営業に来たのがここでしたね。パーテーションで仕切られただけのミーティングスペースで國光さんと話したのは良く覚えてますよ。その時の面談メモも残ってます。
大枝 ビジョンや体制など細かくヒアリングされていたんですね!
あれ? ここに「國光社長の現場力」って書いてありますね。
銀行マンだった川本がSNSからgumiに連絡したことをきっかけに、國光との面談が実現。当時の川本のメモが残っていた。 大枝 川本社長は当時政府系金融機関に勤めていて、gumiに出資できるか見極めていたんですよね。
一流の金融機関に勤めていて安定した将来が約束されていたのに、何を思ってgumiに転職したんですか!?
川本 自分がgumiにジョインしたのはそれから4年後の2011年やけど、当時は既にヒット作も出始めていて、國光さんも面白い人やし、gumiに可能性を感じていたんだよね。正直CFOの座も狙ってた(笑)。だから國光さんと飲みに行って、誘って欲しい気持ちを抑えてまずは探りを入れてみたわけ。そうしたら國光さんも「お前の気持ちはどうなんだろう…」という感じで(笑)。
國光 あの探り合いはすごかったよね(笑)。付き合う前の男女の「え、彼氏とかいんの……?」みたいなもどかしい感じ(笑)。
当時を懐かしみながら、オフィスの周辺を散策する二人。 大枝 うわ……じれったいですね(笑)。その後どうなったんですか?
川本 たしか、次に会った時に俺から条件提示とプレゼンをして、その次で合意したんだよね。
最後國光さんから返事をもらう前に、前の会社には辞めることを伝えていたけどね(笑)。
國光 あの時は川本さんの口では言わない「誘って欲しいオーラ」を強く感じたな(笑)。
大枝 それだけ國光会長に惹かれるものがあったということですね!
國光 うん、出てたね。結果として、川本さんの入社はgumiにとってのターニングポイントの一つとなったわけだけど。
2人の経営者とgumiの発展 大枝 その後、川本社長はずっと会長を隣で見てきたと思いますが、経営者として國光会長のどんなところを尊敬していますか?
川本 それはシンプルに三つ。一つ目はゴールオリエンテッドなところ。やることはすべてゴール達成のためで、前例がなくても厭わずにやる。二つ目は、ポジティブで性善説なところ。マイナスな局面でも常に次の布石を打ち続けて、転がりながらも前を向く。そして、部下には必ず2nd チャンス、3rdチャンスを与える。
川本 だから、それはちゃいますわ(笑)。
三つ目は、人を巻き込む力。國光さんはどこへ行っても人気者で、この業界では重鎮だけど全然偉ぶらないし、若手からしてもちょっと上のお兄さんのような存在。頑張る人を引き上げてやろうという気概がある。これは、俺にはないところかな。
大枝 川本社長はちょっと怖いオーラが出てますもんね……。
川本 本当にそう思ってたらたわしとかタヌキとか乗っけてないやろ(笑)。
大枝 実は心が広いのは知っているので。
逆に、会長が川本社長を尊敬するのはどんなところですか?
國光 俺も3つ挙げるとすると、一つ目は絶対に最終的にNOと言わないところ。
川本 國光さんからの無理難題な指示も結構やりきりましたよ(笑)。
國光 でも、最初は「いや、さすがにそれは……」って言って、俺の本気度を伺うよね(笑)。それで本気と分かったら、出来ないと言わないけど。
川本 たまに本当に「正気か!?」と思うことがあるから、確認はしますよね、一応(笑)。
國光 確かに(笑)。
二つ目は、常に会社としての最善を考えて行動しているところ。色々と面倒なことも、プライドに固執しないでコントロールしているのは見事だよね。これは俺には出来ないな。
國光 三つ目は、逃げないし折れないこと。色んな経営者を見てきたけど、困難があると心が折れてしまったり、投げ出してしまう人も結構いる。その点、川本さんは最後までやり抜く責任感がある。
大枝 お二人は、お互いの強みを明確に認識されて活かしてきたんですね。
國光 うん。自分が不得意なところを川本さんがフォローしてくれたから、gumiはしっかりした組織になれたのは事実。これまで一緒にやってきて、もう川本さんに任せられると思えたから退任を決断できた という側面もあるよね。
大枝 そういえば、先日國光会長が書かれたnote記事で「gumiはこの5年で川本さんを中心にしたいい会社になってきた」とも書かれていましたよね。「いい会社」や「しっかりした組織」というのは、具体的にどういうことですか?
國光 一番は、川本さん主導できちんと利益を出せる体制になったこと だよね。「売上はビジョン、利益は努力」っていう俺の名言があって……
國光 現場が売上に意識が向くのは当然なので、開発や広告などにどんどん予算投下しがち。でも、利益を出すという観点では、予算やコストを精査したりコントロールしたりする必要があって、そこを川本さんがしっかり現場とも対話しながら統制してきた。これって、現場との信頼関係も必要になるので、結構大変なことだよね。
川本 自分がそこを意識してきたのはもちろん、いまでは現場も利益を意識してくれるようになってきた。意識改革の成果が出てきていることは大きいですよ。
國光 うん。gumiはもう、自分がいなくても十分成長していける組織になった し、今後にも何も心配していないよ!
川本体制のgumi、これからどうなる? 大枝 会長はgumiの今後に不安はないということですが、川本社長も「どーんと来い!」という感じですか?
川本 いや、正直不安はあるよ。これまで國光さんがいたから救われたことも多々あったからね。それに、自分はこれまで最強のNo.2として國光さんのビジョン実現に向けてサポートしてきた自負はあるけど、これからは自分がビジョンを描いていかないといけない。
大枝 こう言っちゃなんですが、ビジョンを描くことと、サポートすることは結構違いますよね!?
川本 うん。だから、國光さんのゴールオリエンテッドな考え方や、人を巻き込む力は見習わないといけない。あと、去年國光さんが代表を降りて一代表制になってからは、自分が未来のことに集中できるように現場と管理部それぞれに執行役員を配置して、今のことは彼らに任せられる体制づくりを進めてきた 。
大枝 最近の体制変更にはそういう背景があったんですね! 納得です。
川本 あとは、國光さんには今後もgumiのファンド運営には協力いただけるし、メンターとして個人的に相談に乗ってもらえることは心強いかな。
國光 俺もこれで引退するわけではないし、同じ業界にもいるしね。
川本 芸能人のスキャンダルみたいな言い方するな(笑)。
大枝 それで、川本社長がビジョンを描く立場になって、gumiはこれからどんな会社になるのでしょうか? 大方向転換を企んでいたり……。
川本 それはないよ(笑)。やっぱり
「Wow the World !」をミッションに掲げる会社として、まずはゲームで世界の人たちに感動を与えられる会社にしていきたい と思っている。今やっているオリジナルや他社IPのモバイルオンラインゲームだけでなく、2.5次元とかコンソールゲームにも取り組んで
より総合的なゲーム会社にしていきたい 。
これまで國光さんがやられてきた新規事業領域は、投資先を通じたブロックチェーンのコンテンツ開発と、ファンドを通じた海外企業への投資はより注力していく予定。VRも、自社ゲームのVR化の可能性もあると思う。
大枝 なるほど、安心しました。
國光会長は今後のgumiに何を期待しますか?
國光 今、川本さんが言ったことをしっかりやってもらって、とにかく時価総額1,000億円を早期に奪還してもらいたいね。
あとは自分が信じて任せた経営陣が考えていくことだから、前例に捉われずやってほしい かな!
大枝 ここまでお話を聞いて、お二人の信頼の深さが分かりました。クーデターとか疑ってすみません……。
川本 違うからね、本当に(笑)。引き留めた側だから。
大枝 はい。タヌキ乗せちゃったこともすみません。でもタヌキは「他」を「抜く」という語呂合わせから商売繁盛の縁起物と言われているので、許してください!
大枝 なんだか、國光会長がgumiを去ってしまう実感が湧いてきました……。
川本 正直寂しいよね。國光さんがいたから今の自分があるという意味で、本当に感謝しかない。俺が國光さんを信頼していたように、これからは俺のことを信頼してくれるメンバーを増やしていかないとな。
大枝 名残惜しいですが、川本社長、最後に今後の意気込みをお願いします!
川本 待って、8兆円は俺言ってないで(笑)。
でも、1,000億円奪還は当然の通過点として、國光さんの意志を継いで、世界に通用するゲーム会社になれるよう粉骨砕身努力していく ということに尽きるかな!
だから、ビジョンに共感してくれる人は是非一緒にgumiで人々に驚きや感動を与えられるゲームを作りましょう!
國光会長、ありがとうございました!
2021年7月28日 第14回定時株主総会を終えて ※新型コロナウイルス感染症対策を十分に講じた上で、写真撮影時のみ、一時的にマスクを外しています。
写真:山崎 玲士