制作の状況はすべて把握する。デバッグ歴15年のデバッグリーダーの仕事術

多くの工程があるゲーム制作の中で、一番最後の工程となるデバッグを担うのがQAセクションです。今回は、ゲーム会社でのデバッグ歴15年、現在Studio FgGの運用タイトルでデバッグリーダーを務める“しい”(ニックネーム)に、デバッグリーダーに求められる役割や、ゲーム制作の最終工程だからこそ大切にしていることを聞きました。

◆プロフィール

しい

QAセクション所属。これまで複数の会社でデバッグを経験し、2019年にgumiに入社。デバッグリーダーとしてチームを取りまとめ、デバッグ業務の進行管理、コスト管理などを担う。

仕様作りの段階からQAの意見も伝える

まず、gumiのQAセクションが何をやっているのか教えてください!
簡単に言うと、QAセクションではアプリで配信されるもののすべてをiOS、Android、PCの各デバイスで検証しています。機能アップデートの際の機能検証やユニット、アイテムをリリースする際のデータ検証はもちろん、「お知らせ」の中身まで全部見ていますよ。
本当にゲーム内のコンテンツはすべて見ているのですね。検証ではどんなことを意識しているのですか?
多くのユーザーさんにプレイしていただいていますから、複数の視点を持つことは大切にしています。例えばゲームを早くクリアしたい人と、じっくりプレイしながらクリアしたい人では、プレイされている際に見ている箇所や気になるポイントが違ってきます。前者の視点にしかフォーカスしていないと、後者のプレイスタイルで遊ばれているユーザーさんにとっては遊びにくいゲームになってしまいますよね。
なるほど、仕様が正しく反映されているかだけではなく、様々な価値観を持っているユーザーさんを想定し、それぞれの視点で遊びやすいかを見ているんですね。
はい。なので、仕様を作る段階から打ち合わせに入れてもらい、「こういう動きで大丈夫か」「こっちの方が遊びやすいんじゃないのか」といった議論を他セクションと一緒にしているんですよ。
デバッグはすべての制作が完了した後の最終作業のイメージがありましたが、制作段階から関わっているというのは驚きです!
すべての開発、運営対応が終わってから検証依頼をしてもらうやり方もありますが、最初から関われる方がプロジェクトの全体像やどういう考えのもと仕様が作られているかが把握できるので、最終的なデバッグの作業にも活きてきます。自分からも「ここは触らないよね」とか「触る範囲が狭くないか」とか仕様に対して意見を言いますしね!
プロジェクトチーム一丸で制作している様子が伺えますね。
これまで長くゲームデバッグの仕事をやってきましたが、ここまで最初からフラットにアイディアや意見を言える環境は本当に有難いですね。皆が心から「良いものを作りたい」と思っているからこそだと思います。

最終工程だからこそ、事前の状況はすべて把握する

QAセクションの役割は分かりましたが、デバッグリーダーとしてはどんな業務がありますか?
外部の協力会社の方も含めたデバッグチームを統括していまして、チーム全体のスケジュール管理とコスト管理が主な役割です。プランナーからのデバッグの依頼をベースに、誰を、いつ、どの作業に割り当てるかといった計画を立てています。
チームの計画をつくるうえで重要なことはなんですか?
デバッグはゲーム制作の最後の工程ということもあり、制作の段階でスケジュールや仕様の変更があったりすると、すべてデバッグの作業に影響します。なので、制作の状況をすべて把握しておくことが重要ですね。
先ほどのお話にもあったように、先回りして制作段階から状況を知っておくことが大事なんですね!
はい。複数のデバッグ作業を同時並行で行っているので、どこか一つに変更があるとチーム全体の作業の見直しが必要になることがあります。都度、パズルゲームのように全体を調整しているんですよ。
より良いものを目指す中で、スケジュールや仕様の変更は少なくないと思うので、調整は頻繁に発生しそうですが……。
そうですね。でもそれがゲーム制作なんです。私は、ゲームは刻一刻と変化していくという意味で“生き物”だと思っているんです。ペットを飼っていると、毎日何かしらのイベントがあるじゃないですか。餌やりとかルーティーンのものも、突然体調を崩して病院に連れて行くような突発的なものも。ゲームも、アップデートで成長していったり、順調にいくと思った部分が上手くいかなかったり、日々色々なことが起こるんです!
なるほど! “生き物”と思うと、様々なイベントが起こって当たり前というのは納得できます。
そんな“生き物”を相手に、決められた期限とコストの中で様々な出来事に対応しながら、できるだけ高いクオリティを目指す。常にクオリティとスケジュールとコストの三つ巴です(笑)。
全体の状況を見ながら、最善のスケジュール組みとコスト配分を行い、クオリティを担保することがデバッグリーダーの使命ということですね。
そう言えますね。ただ、最善を尽くしても、どうしても不具合が出てしまうことがあります。そのときは、原因が何だったのか、どうしたら今後出さないようにできるかを考えることも重要です。
どのように原因を追究するのでしょうか?
まずは自分自身の振り返りを行います。時間配分が適切だったか、人員は十分だったか、不足していたとしたらどうしたら足りたか、というようにマネジメント面での原因を探っていきます。人のせいにするのではなく、自分の中の原因を見つけることで、今後同じような不具合を出さないための対応が取れると思っています。
ゲームをより良くすることを、本気で考えているんですね!
正直日々修羅場ですが、楽しいですよ!(笑)
修羅場も「楽しい」と言えるのはすごいです。
これは自分の性なんですが、大変な時ほど「やってやろう!」とモチベーションが上がって楽しんでいる気がします(笑)。あとは、やはり自分も大好きなゲームを、試行錯誤を重ねて大切に育てていくことにやりがいを感じますし、そのゲームをユーザーさんに楽しんでプレイしてもらえることが何よりの喜びですね!

日々のコミュニケーションで情報を受け取りやすい環境をつくる

デバッグリーダーの業務を行ううえで、しいさんが大切にしていることは何でしょうか?
制作のスケジュールなどを常に把握しておかなければならないので、プロジェクトメンバーとのコミュニケーションは密に取るようにしています。
変更などがあったとき、すぐに情報が入るようにしているのですね。
はい。普段からメンバーとコミュニケーションを取っていると、「ちょっとギリギリになりそう!」とか「こういう仕様に変わりそう」という“ジャブ”が打たれやすくなるんですよ。私たちは基本的に依頼を受ける側ですが、慣れている人の方が色々と頼みやすいし、ネガティブな情報やちょっとしたことでも話しやすいじゃないですか。
相手が自分に依頼しやすい環境をつくることまで考えているのはすごいです!
実際、メンバーとのちょっとした会話の中でもらえる情報のおかげで、リアルタイムのスケジュールが把握できています。それに、良い関係性の方がお互い気持ちよく仕事ができますしね。
コミュニケーションのコツはありますか?
実は、私も得意な方ではないのですが、初めは「元気ですか?」とか「今どんな作業をやってるんですか?」とか簡単な会話で良いと思います。あとは同じゲームを作っているメンバー同士ですから、仕事に対する共通の想いはあるはず。そこを探り合って、ぶつけ合える関係性になれればいいと思います。
難しく考える必要はないんですね!
「お疲れ様です」と声をかけられて、嫌な気分になる人はいないと信じているので! まずは、自分から声をかけにいくことを心がけています。
そうやって自らプロジェクトに入り込んでいっているからこそ、QAセクションが制作段階からフラットに参加できる環境があるのでしょうね。

ちなみに、しいさんご自身はどんな人と一緒に働きたいと思いますか?

そうですね。広い視野で物事を見て、ポジションにとらわれず自分の考えを持って自発的に業務を行える方ですかね。
「自発性」が大事というのは、これまでのお話からも伝わりました。
はい。既存のやり方に固執せず、新しい考えも積極的に取り入れていってほしいです!
「新しい」といえば、QAセクションの体制も最近新しくなったのですよね?
そうなんです。これまでCSと一体のセクションだったのが、QAが独立しアプリ専門のデバッグに特化したセクションとなりました。これからは、プロジェクト間の連携をより密にして、デバッグの専門性を高めていく方針です。
QAの今後の動向にも期待ですね!
新生QAセクションとして採用も積極的に行っていますので、興味を持っていただけた方はぜひご応募ください!