「gumiを知ってもらう」ことに振り切った“本気の”経営合宿。執行役員陣の狙いと目指す先とは?

先日、現場マネジメント層を対象としたgumi経営合宿を実施しました(※)。経営合宿は過去にも行ったことがありますが、現場主導で実施するのは初めての試みでした。
今回のコンセプトは「歴史を知る」「課題を知る」「来期を知る」と、とにかくマネジメント層のメンバーに「gumiを知ってもらう」こと。なぜそこに拘ったのか?参加者にはどんなことが伝えられたのか?そして経営合宿を終えた今、先をどう見据えるのか?
経営合宿に潜入していたばんぐみ編集部の大枝が、企画した張本人である執行役員の宮川とKeiに後日話を聞きました。

宿泊はせず、新型コロナウイルス対策を万全に行ったうえで実施しました。

<登場人物>

宮川 祥太(みやかわ しょうた)

Studio FgGスタジオ長。2012年にgumiへ入社し、2016年よりStudio FgGスタジオ長、2020年に執行役員に就任。gumi主力タイトル全般の開発工数管理や運用施策の企画を手掛ける。

本吉 恵輔(もとよし けいすけ) 

管理部執行役員。2016年にgumiへ入社し、経営企画を担当。2021年5月より執行役員を務める。管理部門全体の舵を取り、gumiグループの経営戦略や予算の策定・管理、また協業先との調整等を行う。

目的はgumiを好きになってもらうこと

宮川さん、Keiさん、経営合宿お疲れ様でした! 今回の合宿は「gumiを知る」がコンセプトでしたよね。
そうだね。まずはしっかり時間をかけて、会社の歴史、課題、今後を知ってもらおうと思って。
普通、経営合宿というと幹部メンバーが夜通し経営課題を議論し合っているイメージですが、今回、まず「知ってもらう」ことに拘ったのはなぜでしょう?
今回の一番の目標は現場マネジメント層に「gumiを好きになってもらう」ことだったんだよね。
好きになってもらう!? そもそも、マネジメント層のメンバーはgumiが好きじゃないんですか!?
いや、そんなことはないと思うけど(笑)。今後gumiを支えていく彼らにもっと会社のことを理解して好きになってもらうことで、自身や部署のことだけではなく、「会社目線」で課題を捉え、解決策を考え、改善や成長に繋げていって欲しいと思ったんだよね。意識改革の一環かな。そのために1日業務から離れてもらって、gumiのすべてを知ってもらう機会を作ったということ。
恋愛と同じように、好きになってもらうためにまず自己開示をする戦略ですね。Keiさんはどうでしょう?
会社を好きになってもらうことにも繋がるけど、管理部としては経営と現場の距離を縮めることが大きな目的だね。マネジメント層とはいえ、経営陣と関わる機会は限られているから、経営陣の想いやマネジメント層への期待を感じ取ってもらいたかった。
なるほど。コロナ禍でコミュニケーションの機会はさらに減ってしまっていますしね。
うん。それにgumiの場合従業員の多くが中途入社で、特に現場はそれぞれの専門分野を持った人たちが集まった組織だから、新卒中心の大企業とは違って企業文化が醸成されにくい。だからこそ、こういう皆が集まって目線合わせをする機会は重要だと思った。
そうだね。人材が流動的な業界だけど、皆とは長く一緒に働きたいからね。そのためにはやっぱり、gumiを好きになってもらわないといけないんだよね。
そもそも好きじゃないと、長く働こうとは思えないですもんね。「好きになってもらう」という目的の背景はよく分かりました!

それにしても、gumiのことを知るためのコンテンツだけで本当に丸一日かかりましたよね……。

パワポ資料が670ページあったからね(笑)。
670ページ!? たしかに盛りだくさんでしたが、そんなにあったとは……。
まさに本気の経営合宿ですね。
資料も見ながら、改めて当日の内容を振り返らせてください。

本気の経営合宿。その内容とは?

歴史を知る:山あり谷ありのgumiの歴史を赤裸々に紹介

最初に、gumiの創業から現在までの歴史について、1時間半くらいかけてお話がありましたね。創世期の時点で30分経過していたときはどうなることかと思いましたよ……。
マネジメント層のメンバーの中には最近gumiにジョインした人もいるし、その他のメンバーも創業当初の話はほぼ知らないと思って。それにこうやって歴史を振り返る機会はなかなかないと思うから、改めて丁寧に伝えたいと思ってね。gumiの歴史はgumiの大事な資産でもあるから。
普通こんなに長々と社史を語られたら眠くなりそうですが、失敗と教訓を軸にしたストーリー仕立てで生々しい話も結構あったからか、皆さん興味深く最後まで聞いている様子でしたね。
会社の良いときだけでなくて良くなかった時のことも知ってもらいたいから、当時どんな状況だったのか、なぜそんな状況になったのかを赤裸々に伝えた。成功より失敗の話の方が多かったかもね(笑)。
あの時は生きた心地がしなかったな……とか、色々記憶が蘇ったよ。
あとは、今だから言えるような裏話も盛り込まれていたので盛り上がっていましたね(笑)。
どこまで言って良いものかと思ったけど、もうこの際全部話しちゃおうと(笑)。楽しんで聞いてもらいたかったしね。
そんなこんなで、本当に全部詰め込んだら、歴史パートだけで資料が260ページになったんだけど(笑)。
こういう場でもエンタメ性を意識するところは、gumiらしいですね。
いやー、過去を知る人にたくさんヒアリングもしなければならなかったから、資料作りは大変だったけど、ここまでやったかいはあったんじゃないかな。
参加者の満足度も集計しているので、かいがあったかはまた後ほど!

課題を知る:セクション毎の課題と解決に向けた取り組み

続いての「課題を知る」パートでは各セクションの業務遂行上の課題を発表していましたが、セクションリーダーは現実を突きつけられたのではないでしょうか……。
実は、当日に発表された課題は経営合宿前にセクションリーダーと何度も議論をして洗い出したものなんだよね。事前の議論を通じて、現場が今まで認識していたけど対処できていなかった課題に改めて向き合ったことは、価値があったと思う。
当日発表されただけではなく、事前の話し合いがあったのですね。
改めて、どんな課題が上がっていたのでしょうか?
日々様子を見ているから予想はしていたけど、改めて可視化されたよ。
<プランナー・PR>
  • 緊急での対応や差し込みが多い
  • スケジュールの明確化
  • ノウハウが十分に蓄積されていない
  • 進行管理の質の向上
<クリエイティブ系>
  • 仕様や世界観に関しての連携が他セクションと十分にできていない
  • 仕様や要件の変更が多く発生
  • クオリティラインの明確化
  • 管理職層が作業を多く持ちすぎている
<エンジニア>
  • 在宅勤務下でコミュニケーションが不十分
  • 人員、工数不足

※一部抜粋

山積みですね……。
そうだね。今回、各セクションリーダーが自身のセクションを振り返るだけでなく、他セクションに対して感じる課題も報告してもらったから、より自分のチームの課題を客観視できたんじゃないかな。
今回は知ることまでが目的だったのは分かっていますが、これらの課題をどう対処していくかが重要ですよね……。道筋はあるんですか?
もちろん、一部の課題に対して解決策は考えているよ。一つは、統括アートディレクターの木村が中心となって、各セクションリーダーとも連携しながら進めている「G-ROW ARTISTRY」の設立。
コンテンツ制作部門が一つに統合された、通称「G-ROW」ですね。
うん。セクション間の壁を取り払い、クオリティ面はもちろん、コスト面、採用面の課題にもコミットしていく。
セクション間連携やクオリティコントロールの課題を抱えている部署は多かったですもんね。「G-ROW」は具体的に何をやっていくんですか?
取り組みはこれからだけど、チーム横断の監査委員会、通称「CQP」を作って……
CQP?
Contents Quality Police!
Police!?(笑)
そう、Police(笑)。ネーミングも自分じゃなくて現場だからね(笑)。このCQPでクオリティチェックや業務の効率化を図っていく。それ以外に、映像チームを作ってよりクオリティの高いインゲームムービーやプロモーションムービーを作っていくことも考えているよ。
いろんな構想があるんですね!
もう一つの解決策としては、今セクションリーダーに偏ってしまっているコストや体制、スケジュール管理業務などを引き受けるゲームタイトル横断の組織を作る計画もある。
プロジェクト・マネジメント(PM)セクションですね。
うん。これをつくることで、スケジュール管理が曖昧になってしまっていたり、縦割りでノウハウが蓄積されにくいといった課題の解決に繋げていきたいと思っている。
管理系の業務を一手に引き受けてくれる人がいれば、その他の人はよりゲーム制作に集中できそうですね。
きちんと機能させていけばメリットは大きいと思うよ。
今後の設立に期待ですね!
具体的な取り組みの開始はこれからだし、山積みの課題をG-ROWやPMセクションだけで解決できるとは思っていないけれど、優先度の高い課題から着実に取り組んでいきたいと思っている。事前にセクションリーダーとしっかり時間を取って議論したことで、今後に向けた現場の目線合わせはできたはずだよ。

来期を知る:経営戦略の背景と達成までのシミュレーション

gumiの歴史、課題ときて、最後は未来の話、「来期を知る」のパートです。川本社長からも中期経営戦略の背景と達成までの道程をお話されていましたよね。
現場のメンバーは、自分が関わっているタイトルの予算は意識していても会社全体の目標は知らない人もいるんじゃないかと思ってね。特にマネジメント層のメンバーには、昨年度『新中期経営戦略』で掲げた営業利益100億円という目標を目指す意味を理解しておいて欲しかった。
このパートは特に印象に残ったという人が多かったみたいですよ。
川本社長からは冒頭に「ゲーム会社として、作りたい人が、作りたいものを作れる環境にする」、また「仕事だけでなく、社員のプライベートの充実もサポートする」というお話があったね。「gumiという会社を通じて、社員に仕事とプライベートの充実を達成してほしい。そしてそれが叶えられる会社を、ここにいる皆さんと作っていきたい」という社長の想いが届いていれば、今回の合宿は意味があるものだったと言えるね。
そして、川本社長が目指す会社をつくるために、達成すべき『新中期経営戦略』があるということですね。
そう。合宿で話した詳細な試算の話は省くけど、ゲームの開発費が高騰している中、この市場で勝ち続けるための最低条件が営業利益100億円の創出なんだよ。
100億円とだけ聞くとハードルが高いイメージがありましたが、試算の話を聞いて個人的には納得感が持てました。
そのうえで、じゃあどうやって営業利益100億円を達成するのかという具体的な話をしたんだよね。
今後リリースされる各タイトルがそれぞれどれくらいの売上を作ればいいのか、3パターンのシナリオで解説していましたよね。
特に開発中のタイトルは今予算が課されているわけではないから、リリース後にいくら売り上げないといけないのかを知って覚悟を持ってもらう機会にはなったんじゃないかな。
そうですね。それだけ高い期待があるというメッセージにもなっていたと思います。

経営合宿の効果はいかに!?

さて、お二人主催の“本気の”経営合宿でしたが、果たして参加者へ想いは届いたのでしょうか?アンケート結果はこちら!

参加者の80%が「経営合宿を通じてgumiを好きになった」、87%が「経営陣との距離が縮まった」と回答していますが、この結果を見てどうでしょうか?

総じて成功と言えるんじゃないかな。コメントもポジティブなものが多いし!
「経営陣の考えをより深く知る事ができた」「100億円がなぜ必要なのかが理解できた」と言ってくれている人が結構いるね。狙いどおりgumiのことをより知ってもらえたみたいだし、皆の目線を一段高くすることはできたんじゃないかな。
「悪い歴史を包み隠さず教えてくれたことに好感を持った」「人間味にあふれた会社と感じた」という声もありますね。歴史を赤裸々に話した効果もあったみたいです。
「使命感を感じた」というコメントも多いし、エンゲージメント向上にも繋がったのであれば成功と言えるね。
ちなみに、gumiを好きになったかという質問に「どちらでもない」と答えた人からは、「社風自体がまだ形成段階だと思うので愛着がわくのは今後次第」「好きか嫌いかという観点で差はないが、参加者の目線は揃ったと思う」「もとより、気に入っています」などのコメントがありますね。
もとより気に入ってくれているのは、何より(笑)。
主に運営面での反省点もあったけど、伝えたかったことはきちんと伝えられたみたいで良かった。

次のステップは、一体感のある組織づくり

無事お二人の目的は果たされたようですが、次のステップはどう見据えていますか?
執行役員になってからの1年間、現場の意識改革や体制づくりに取り組んできた。今回の経営合宿もその一環だけど、特にマネジメント層の意識改革には注力してきたつもり。これからは、組織のカルチャーづくりにも取り組んでいかないとね。
そうだね。コロナ禍で全社集会ができなくなったり、コミュニケーションも減っていて、組織のロイヤリティを維持するのが以前より難しくなっていると思う。こんな時代だからこそ、企業理念を軸にした一体感のある組織づくりが必要だね。
今回、「gumiを知る」というコンセプトの中に「企業理念の理解」も含まれていましたよね?
うん、企業理念を一新してから社内に向けての浸透施策はやってきて、徐々に言葉は覚えられてきているけど、まだ本質的な理解が進んでいるとは言えないからね。今回の合宿でクイズでも散々出題したし、さすがに参加者は3つのValueを完璧に言えるようになったでしょう(笑)。
まずはマネジメント層に覚えてもらわないと、その先に広まっていかないからね。そのうえで、行動に移してもらう。そうやって徐々にカルチャーがつくられていくんじゃないかな。
3つのValue(※)を体現している人が増えると、組織としても強くなっていくだろうね。そういう資質を持った人と一緒に働きたいと思うし、そういう人がきちんと評価され、活躍できる土俵はあると思う。

Keep on Trying 果敢に挑戦を
 Stay Positive 常に前向きな姿勢で
 Unite as One 団結して更なる高みへ

そういえばお二人とも、入社時のJob GradeはStaffレイヤーでしたよね!?
うん、自分は入社したときは業界も職種も未経験だったしね。
自分もWebデザイナーとして入社して、当時は執行役員になるなんて想像もできなかった(笑)。
自分も宮川さんも、とにかくがむしゃらにやってきたよね。Keep on Tryingだよ。辛いこともたくさんあったけど(笑)。
でもまあ、どんなに大変なことも乗り越えてきたから今があるわけだからね。そういう意味ではStay Positiveでもあるかな。
Valueを体現している人が評価される環境というのは、お二人が実証していますね!
ただ、具体的にどんな行動が評価されるのかをよりクリアにすることは今後の課題だね。そこもまずはマネジメント層に理解してもらって、彼らからも発信してもらわないといけない部分だよね。
うん。これまでは自分主導でやってきた部分が多いけど、今回の経営合宿で目線合わせができたと思うから、今後はマネジメント層のメンバーとももっと協力して取り組んでいきたい。
お二人が目指す組織づくりに向けて、経営合宿で土台ができたようですね! 今日はお話ありがとうございました!