『タガステ』舞台裏に潜入!今だからこそ、新しい形の舞台に挑戦を

gumiは、モバイルオンラインゲーム「誰ガ為のアルケミスト」(以下、「タガタメ」)に関し、IP(Intellectual Property:知的財産権)強化策の一環として2019年に「PROJECT タガタメイヤー」と銘打ち、舞台、映画、小説等のメディアミックスを展開してきました。中でも、「舞台版 誰ガ為のアルケミスト」(以下、「タガステ」)については、ゲームとは違った圧倒的なライブ感を体験していただけるコンテンツとして、2019年6月公開の初回作「聖石の追憶」以降、9月に初回作改訂版、2020年3月には「聖ガ剣、十ノ戒」の上演を行ってきました。

そして今回、2020年10月7日(水)から11日(日)にかけて、前作「聖ガ剣、十ノ戒」の前日譚(スピンオフ)として、「宛名ノナイ光」の全5公演ライブ配信公演が実現しました。

本作では、「コロナだからできないではなく、コロナだからできることに挑戦したかった」と言う「タガタメ」プロデューサー・今泉の旗振りのもと、全公演VR&2D同時ライブ配信という新しい手法で挑みました。 今回は、開演前の舞台裏に潜入し、演出を担当された磯貝龍乎さんのコメントとともに現場の実態をご紹介します!

すべてが規格外の舞台裏に潜入!

今年3月に上演された「タガステ」シリーズ前作「聖ガ剣、十ノ戒」は、当初通常公演を予定していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、公開直前に2Dライブ配信での無観客公演に変更することになりました。
2Dライブ配信により、役者に寄ったカットが多くなったことで、視聴者にとっては「役者の細かい表情まで見られた」ことから好評を得ました。一方で、全体を俯瞰して観るという舞台特有の醍醐味がなくなってしまうデメリットがありました。そこで、本作「宛名ノナイ光」では、視聴者それぞれのニーズに合わせて楽しんでいただけるよう、全5公演で2Dだけではなく、VRでも同時ライブ配信することにしたのです。さらに、演出の磯貝さんによれば、「セットにもライブ配信公演ならではの仕掛けを取り入れた」そうです。

俳優としての活動をメインとし、「ミュージカル『テニスの王子様』」他、数々の舞台に出演する磯貝龍乎さん。最近は脚本や演出も手掛け、活躍の幅を広げており、「タガステ」シリーズでは本作「宛名ノナイ光」の演出を担当。

「お客様にセット転換が見えない方が良い」という磯貝さんの提案で、通常の舞台ステージに加え客席側にもステージが設置され、この2面を役者が移動し、カメラを切り替えることによってセットが転換される仕組みを作りました。配信ならではの見せ方を追究した、新しい形の舞台への挑戦といえます。

セット奥の通常のステージと、観客席の上に設置されたステージの2面配置。

一つのステージが二つになることで、当然、その分機材や準備は大掛かりになります。
1面ステージ、2D配信のみの前作で使用したカメラは4台でしたが、今回、VRカメラも合わせて計10台のカメラが使用されました。また、通常スタッフは直接ステージを見ながら機材を操作しますが、今回の配置では奥側のステージが見えません。そのため、奥側のステージには、撮影用以外にも監視用カメラが数台設置され、スタッフはその監視用の映像を見ながら操作を行っていました。
撮影や照明の操作が複雑になるため、小屋入り(役者とスタッフが、実際の劇場で本番に向けた練習や準備を行うこと)も前倒ししました。

360度を同時に撮影できるVRカメラ。
奥側のステージにも、VRカメラと2Dカメラを設置。

本番のオペレーションに関わったスタッフは、前作より20名程多い総勢79名。一部のスタッフは、劇場内のスペース制約により、劇場外の踊り場を持ち場としていました。

劇場の客席後方7列分は、機材とスタッフ用のスペースとして使用。
2Dの配信は、劇場外から専属スタッフが対応。

他にはない、新しい形の舞台への挑戦

2種のライブ配信、また2面ステージとなることで、機材やスタッフが多くなるだけでなく、演出の難易度も上がります。磯貝さんは、「セット転換のタイミングが難しく、事前の練習で何度も確認しました。また、VRで見ている方、2Dで見ている方、それぞれに楽しんでもらえる演出を心掛けながらも、特にVRで映える見せ方を追究しました」と拘りを明かしました。
そもそもVRのリアルタイム配信だけでも見せ方は難しく、前例も多くはありません。そのような状況の中でも「普通の舞台では、お客様は席から役者を見上げる形になりますが、VRによって役者と同じ空間にいるような感覚を持ってもらえる」と、挑戦するメリットを強く感じられたそうです。

役者の演技についても、「10台ものカメラを使用したことで、役者が多方面から見られるため、ちょっとしたしぐさや表情の変化など、細かい芝居にも力を入れました。また、VRカメラぎりぎりに迫ったアクションを取り入れるなど、没入感が出る演出を意識しました」と、工夫を語りました。

VRで見ることでさらに迫力が感じられる殺陣シーン。
奥のVRカメラからも同時撮影しているため、VR画面への切り替えで別角度からの視聴が可能。

役者が近くで見られるという点では、メイクアップの技術も重要になります。非現実的な髪色やメイクをも役者に馴染ませ、コスプレ感を排除。観客に違和感を与えずに「タガタメ」の世界観をリアルで体現させた、ヘアメイク・松前詠美子さんの技術力が発揮されました。

今回の舞台について、磯貝さんは、「最初2面のステージ配置を提案した時は、現場の皆さんから驚かれました。それでも、皆さんが難しい提案を受け入れてくれ、挑戦させてくれたおかげで、他にはない新しい形の舞台ができたという手応えがあります」と振り返りつつ、「次は、壁を取っ払って縦長の舞台にするとか、3面の回転舞台にするとか、また新しいことに挑戦したい」と、更なる意気込みを示されました。また、「型にはまらず、まずはやりたいことを本気でぶつけてみれば、きっとそれを受け入れてくれる人がいるはずです!」と、エンタメづくりを志す人へのエールも贈っていただきました。

「タガステ」を続ける意味

最後に、「タガタメ」プロデューサー・今泉に、「タガステ」に対する想いを語ってもらいました。

「僕らはゲームが本業なので、ノウハウの少ない舞台で収益を得ることは簡単ではありません。今回は、多くの機材とスタッフで多額のコストをかけていますのでなおさらです。ですが、舞台をきっかけに「タガタメ」のことを知って好きになってくださる方がいますし、元々のファンの方も一層「タガタメ」を好きになってくださると思っています。こうした方々が2年後、3年後の「タガタメ」を支えてくださると信じているため、僕は舞台を続ける意義を強く感じています。

本作は、これまでのバトル中心の「タガステ」とは一味違う、ザイン(タガタメのキャラクター)の恋愛ストーリーにしました。こんなにも人間らしいザインは、ゲームではなく、舞台だからこそ描くことができたと思います。本作を観てくださったユーザーさんからすると、「普段接しているゲームの中のキャラクターを、人間が演じるとこうなるんだ」、という新しい発見により、「タガタメ」の世界が立体的になり、二重にも三重にも厚みが増して感じられたのではないでしょうか。

コロナ禍でリアル公演の実施が難しくても、「こういう状況だからこそできる形で『タガステ』を継続させる」、それが「タガタメ」がIPとしても強くなることに繋がります。次回の「タガステ」完結編、また、今後の「タガタメ」の展開にも是非ご期待ください!」