「安定など存在しない」gumi國光宏尚とIndeed Japan高橋信太郎氏が提唱する、激動の時代を生き抜くためにすべきこと

gumiは、創業時より新しいテクノロジーを用いたエンタメコンテンツを生み出し続けてきました。創業者の國光は、次なる成長に向けて、また新たな事業領域で挑戦を続けています。

近年、AIやブロックチェーンに代表される最先端技術の登場など、革新的な技術進歩によりIT業界は劇的に変化しています。また、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとしたテレワークや新しい生活様式へのシフトにより、人々の働き方や価値観も大きく変わってきています。このような時代、業界や職種を問わず、もはや安定した場所は存在しません。激動の時代を生き抜く術は、「覚悟を持った挑戦を続け、自分自身を成長させていくのみ」。“現状に満足する人”や、“安定した環境に依存している人”に対して、常に新たな世界に身を投じているgumi國光と、採用マーケットへの深い知見を持つIndeed Japan高橋氏が警鐘を鳴らします。

◆プロフィール

高橋 信太郎(たかはし・しんたろう)

関西大学在学時からベンチャー企業リョーマで活躍。1989年リクルート入社。求人広告事業の営業やゲーム情報誌の創刊を経て、リクルートの子会社のメディアファクトリー(現 株式会社KADOKAWA)へ出向し、ゲームの新流通開発などを担う。2001年まぐクリック(現GMOアドパートナーズ)に転じ、2006年代表取締役、2013年GMOインターネットグループ常務取締役へ。2016年4月よりIndeed Japan株式会社へ転じ、代表取締役/営業本部長を経て、2017年10月より代表取締役/ゼネラルマネジャーに就任。2020年7月より取締役。2016年より、gumiの社外取締役を兼任。

國光 宏尚(くにみつ・ひろなお)

米国Santa Monica College卒業後、2004年、株式会社アットムービー入社。同年、取締役に就任、映画・テレビドラマのプロデュースおよび新規事業の立ち上げを担う。2007年、株式会社gumiを設立し、代表取締役社長に就任。現在は取締役会長として、XR事業やブロックチェーン事業などの新規事業領域を統括している。

撮影/池田実加 取材・文/柴田佐世子

変化を捉え、如何に適応するか

高橋: 今の時代、そもそもIT系スタートアップに限らずアフターコロナで働き方自体も大きく変化しているじゃない?そんな中、個人もその変化への対応が求められているけど、國光さんから見て具体的にどういうところが重要だと思う?

國光: まず、この時代に合うコミュニケーションが上手くできないといけないですよね。例えばSlack(チャット)などのテキストコミュニケーションで良い雰囲気を作れるとか。なぜか文章だとイラッとくる人っているけど、あれはもったいない。
テレビ会議(オンライン)もリアルとは形式が違うから、ファシリテーション的な動きができる人は重宝されますよね。あとビデオ映りが良い人!営業は、いいカメラといい照明を使ってる人のほうが絶対仕事取れます。オンライン会議が主流になると、通信環境が良くて映りがいいやつは仕事ができそうに見えますもん。逆にブツブツ途切れたりすると、こいつ仕事できないのかなって思っちゃう(笑)。印象って大事ですよね。スーツがパリッとしてて革靴もちゃんと磨いている人って、やっぱ仕事できそうな感じに見える。それを今後はオンライン「ならでは」で魅せていくことになるのかと思っています。

高橋: 確かに、そこが大事って気づくかどうかだよね。ちょうど昨日聞いた話だけど、顧客へのオンライン営業で、カメラ3台使って、テレビ番組みたいにアングルチェンジしながらプレゼンをしている会社があるんだと。映像の力で顧客をガーッと引き寄せて、最後スパッと刈り取るって言ってたけど、まさにそういうことだよね(笑)。

國光: もう、時代は元どおりにはならないです。電話がメールやチャットに変わって衰退したように、対面でのミーティングを求められると「空気読めよ、やだよ」って思ってしまう。もう戻らないでほしい(笑)。

高橋: 「電話していいですか?」って先にチャットする時代だもんね。対面での打ち合わせは、僕はまだ戻ってほしい気持ちがちょっとあるけどね(笑)。
あと、マネジメントの部分でもこれまでとは違ったスキルが必要になっていきそうだよね。それこそオンラインのコミュニケーションで齟齬があった場合に、「今日一杯行くか」なんてフォローができなくなる。一度スタッフの心が離れたらおしまい、なんて展開にもなりそう。

國光: これまではすぐそばに居たから、雰囲気を察しながらコミュニケーションを取れる人ほどリーダースキルが高いと言われていましたが、これからは違う。今後は、こまめな1on1を実施するとか、本音を引き出すきめ細やかなコミュニケーションができる人は管理職として活躍していくと思います。
あと、セルフコントロールも一層大事になってきますよね。在宅勤務で運動不足になったという人がいるけど、だったら通勤が無くなった分運動の時間を作れよと思う。ベストを尽くせる環境くらい自分で整えないと、これからは通用しないですよ。

高橋: やっぱり、変化には「抗う」のではなく「順応」していく、柔軟であることが大事ってことだね。その意味では、テレワークに関係なく、組織の性質上日々変化があるスタートアップやベンチャーでは、当たり前のように柔軟さが求められるよね。

國光: そうですね。スタートアップやベンチャー企業は日々の意思決定のスピードがものすごく早いから、従業員からしたら朝令暮改で「何なの?」って思う場面も結構あると思います。会社としてはいろいろなところから情報を取り入れて、ベストな意思決定をしているだけですが、会社のスピードに個人のスピードがついていけないと、辛いかもしれないですね。

挑戦を続ける覚悟はあるか

高橋: でも、単に環境変化に順応しているだけでは突き抜けた活躍人材にはなれないよね。

國光: 足りないですね。柔軟さに加えて、挑戦する力が必要です。つまり、圧倒的な努力と、高い目標を持ってどんどん新しいことに取り組んでいくこと。

高橋: うん、その前提として重要なのは「いつまでにどこまでをやり切るか」を決めることだから、自分の役務に対してちゃんとコミットして、責任を持って結果を出し続けることにほかならないよね。それができる人材はどの時代でも、どの業界でも重宝されるし、そういう意味ではテレワークになっていこうが、求められる人材の根本は変わらないのかもね。そもそも、テレワークになるから活躍できる人物像がガラッと変わるっていうのもおかしな話だし。

國光: 会社も個人も、油断すると一瞬で時代に取り残されちゃいますからね。過去に固執しない、今に留まらない、一段上を目指し続ける努力は、これからの時代さらに重要になってきますね。

高橋: その努力をどうやったらいいかわからない人って多いじゃない。國光さんの場合は、どんな風にしてきたの?

國光: 自分がやろうとしていることに関しては、徹底的にやる。ゲーム制作をしたいのであれば、自社ゲームのやり込みはもちろん、人気のゲームや話題のゲームは全部体験してみるべきですね。自分でやらないと分からないし、結局そのほうが理解は早いんですよ。
あとは、最新情報のインプットは欠かしません。特にテック系の最新情報は海外から発信されているので、国内のサイトだけでなくTechCrunchとかVentureBeatとか海外メディアも見ます。あとは、その業界に関する本を読んだり、詳しい人に直接会って話を聞いたり。特に本は情報がまとまっているので有用です。今も寝る時間と作業時間以外は、全てインプットの時間に充てていますよ。

高橋: 國光さん自身が留まらないから、説得力があるよね。今取り組んでいるVR、ARやブロックチェーンの世界は、これまでに無かった新しいものを作っていくものだと思うけど、技術力にプラスして求める資質はあるの?

國光: それもやっぱり、勉強熱心で、常に一歩先を目指せるかどうか。One Step Beyondですよ(笑)。

高橋: 國光さんが創業時からずっと言ってる言葉だね(笑)。

國光: みんな慣れたことばっかりやりたがって、本当に努力して新しいことにも積極的に挑戦している人って実は少ない。これからもどんどん新しいテクノロジーが出てくるんですよ。その時に、単に「自分の仕事がなくなるかも、ピンチ!」って思っているだけで、いいんですか?と問いたい。「人より早く習得して、自分がパイオニアになろう!」と思えなければ、成長はそこで止まってしまいますから。

gumiの歴史は、常に激動と共にあり

高橋: 個人だけではなく、企業も変化に対応してく必要があるよね。gumiでいうと、創業からいまに至るまで、まだ13年くらいなのに、山あり谷ありで変化が激しかったよね。そもそもさ、gumiの創業期ってどんな感じだったの?

國光: 創業期というと、オンラインゲーム開発を始める前までで、初めて売上が立った4年目までを指すことになると思います。この頃は、オフィスは喫茶店の中でしたし、その後もしばらくはいろいろな会社に間借りしていたような状況でしたね。

高橋: そっか、今でこそ大きなオフィスを構えているけど、最初はそんな船出だったんだよね。

國光: これまでの歴史をざっくり振り返ると、創業から最初の2年間はSNSのプラットフォーム作りに挑戦していて、mixiがプラットフォームをオープン化した頃にガラケーのソーシャルゲーム制作を始めました。その翌年だったかな、GREEもプラットフォームをオープン化して、ようやくヒットタイトルが出始めたんです。
そのタイミングで初めて億単位の資金調達ができたから、上場を目指して従業員数を10人くらいから一気に100人規模に増やしました。2012年からは海外進出にも力を入れて、立て続けに10拠点とか作りましたね。

高橋: 短期間で、まさに激動だったね。

國光: 正直、昔のことは正確に思い出せないところもありますけどね(笑)。

高橋: 國光さんは、常に未来のことしか考えていないタイプだからね(笑)。

國光: そうそう(笑)。でも、それだけいろんな挑戦をしてきた証ともいえると思います。

高橋: 國光さんを見ていたら、挑戦しない企業だなんて絶対に思わないしね。

國光: gumiは挑戦し続けてきた結果、何度か潰れかけましたけどね(笑)。モバイル版プラットフォームの開発で時代を先取りし過ぎたり、グローバル版ゲームの売上予測を見誤ったり、要因は様々でした。でもそういう経験がきっかけで収益体質とか組織基盤がしっかりしてきました。
結局は、うまくいかなかったことを、失敗や挫折と呼ぶのか、学びと捉えるのかで結構変わってくると思うんです。失敗じゃなくて、仮説検証であって、うまくいかない方法を一個見つけただけだと認識するのが大事だと思っています。

高橋: 確かに、すぐにネイティブシフトへの対応をしたり、経営体制変えたりとか、危機に対して迅速かつ柔軟に対処してきたから今のgumiがあるわけだ。

國光: gumiのMIND(忘れてはいけない基本精神)としてOne Step Beyondを掲げていますが、それを実現するために、社員には“First to Try, First to Fail, First to Recover”を実践していくことを求めています。失敗しても死ぬわけじゃないんだから、まず挑戦してみてって。gumiは自分で積極的にボールを拾いに行ったら、ちゃんと役割と責任が与えられるから、正直、成長したい人や新しい挑戦を続けたい人には、適した環境だと思いますよ。もちろん、ゼロからイチを作ることが多いので、大変ですけどね。

成長の鍵は、身を置く環境にあり

高橋: 挑戦とか成長できる人って、他人から言われて動いているわけじゃないもんね。自ら湧き出てくるというか、衝動みたいなもの。これって、生まれながらに持っている資質ともいえるかな。

國光: もちろん生まれながらの要素もありますが、そこは環境で変えられます。というか、人は環境でしか変われないと思います。スタートアップがなんで東京に集まっているかって、自分を変えたいと思う人が日本中から東京に集まってしのぎを削るからでしょう。新しい人間関係を作ったり、ゼロから仕事を覚える中でインプットが圧倒的に増えるから、成長の幅は、やっぱりゼロイチの時の方が大きい。だから、同じ領域よりも、全く異なる新しい領域に飛び込んでいく方が、圧倒的に成長は早いと思いますね。

高橋: 就職とか転職こそ、環境を大きく変えるチャンスだからね。採用市場全体としてはまだ安定志向の人が多い一方で、スタートアップやベンチャー企業に行く優秀人材が増えていることは事実。

國光: その実感はありますね。最近gumiにも一流大学出身で一流企業に勤めていた人材も結構入ってきています。彼らが我々のようなスタートアップやベンチャーに来るようになった理由としては、まずは大企業が必ずしも安定ではなくなってきたこと。それに加えて、gumiを創業した10数年前と比べると、スタートアップの資金調達の状況が圧倒的に良くなり、給料をしっかり支払えるようになったことは大きいです。あとは、スタートアップで成功する高学歴人材が出てきたこと。周りの友人がスタートアップで夢を追いかけてすごく楽しそうだったり、一攫千金を実現しているところを目の当たりにしたりして、自分も挑戦してみようという人が増えている印象ですね。

高橋: gumiでは大企業から来て実際に活躍している人ってどういう人材なの?

國光: 中長期的な時間軸を持って能動的に動いている人材が、持続的に成長して活躍しているイメージですね。ちゃんとした企業勤めの経験があって地頭良い人って、何をしたら会社に貢献できるかを自分で考えて行動するから、成果を出すのも早いですし、権限もどんどん広がっていますね。

高橋: スタートアップ企業に集まる優秀な人材がやる気のある優秀な経営者と巡り会って、高い裁量と責任が与えられた結果、キャリアがぐんとアップすることって結構あるんだよね。

國光: 特に、新しい業界にはまだ大御所と呼ばれる人がいないから、全員横一線でスタートできます。モバイルゲームでは5~6年の経験で多くのヒット作を出して活躍している人もいるし、VRやARともなればまだ重鎮は存在しません。だから、大手企業では考えられないほど、若手にチャンスが回ってきやすい。
今回のコロナにしても、一年前から見たら「まさか」って感じですけど、これから先の方が、いままで以上に変化が激しい時代になるんです。その中で自分の人生をより良くしようと思うなら、現状にしがみついたり、どこかにある安定を探すのではダメなんですよ。自分から成長できる環境に飛び込み、責任あるチャレンジを続ける。それが、これからの人生の真の安定や成功につながると思いますね。

激動の時代に、一歩突き抜けたい人へ

高橋: もはや、安定した場所なんてない時代だからね。そこに気づいている人はどんどん行動に移している。逆に高みを目指したいのに、新しい環境に一歩踏み出す勇気がなくて現状のぬるま湯に浸かっちゃう人には「いまからでも遅くない」と伝えたい。

國光: 安定した未来を約束されている人なんて存在しないからこそ、自分が挑戦し続けることで、いろんなキャリアやスキルを身につけていくことが重要だって、みんな気づき始めているんじゃないでしょうか。あとは、目指す夢の大きさも重要。自分のステージに関係なく、まず目線を上に向けておくことが大事で、同級生と比べて満足するか、世界に目を向けるかで、成長の度合いは相当違いますよ。ゲームでも、世界を見渡せば月間100億円規模で売れているタイトルがあります。国内だけ見て現状に満足するのか、世界と比べたらまだまだと思うのか、その差は大きいですよね。僕は本気で世界No.1を目指しています。

高橋: 転職を考えている人は、そこのトップマネジメントがどんな考えを持って、何を要求してくるのかをしっかり見るべきだと思う。企業の知名度とか目先の給料とかやりがいとかだけではなくて、その先に自分の価値を高められる、挑戦できる環境があるかを見極めることが大事だね。

國光: 実際、本当に挑戦している企業はそんなに多くはないと思います。だからこそ、自分の人生の成功は自分自身で掴み取る覚悟が必要かと。僕自身も、そういう気概のある人と出会いたいし、一緒に働きたいと思います。もう、順番待ちをしなくていい時代ですから。